2026/10/03 10:01
こんにちは。
愛媛県今治市、大島にある海宿 千年松です。
前回は、千年松ならではの料理「アナゴしゃぶ」について書きました。
刺身で味わって、そこからほんの2秒ほどしゃぶしゃぶする。
同じ魚でも、食べ方によって表情が変わる。
そんな料理のおもしろさを、少しでも感じてもらえたらと思っています。
今回は、そこから少し視点を変えて。
千年松で大切にしている魚のひとつ、**「鯛」**について書いてみたいと思います。
鯛と聞くと、決して珍しい魚ではありません。
むしろ、日本の食卓では昔から親しまれてきた魚です。
でも、千年松にとって鯛は、少し特別な存在です。

海の目の前だからこそ、鯛を身近に感じる
千年松は、大島の海のすぐそばにあります。
毎日、海を見ています。
船が行き交い、潮が動き、天気によって海の表情も変わります。
そんな場所で旅館を営んでいると、魚は決して「特別な食材」ではありません。
日々の暮らしの中にあるものです。
その中でも鯛は、私たちにとって馴染みの深い魚。
料理としてお客様に召し上がっていただくこともあれば、仕入れの状況を見ながら、その日の料理を考えることもあります。
「今日はどんな魚が入っているのか」
それを確認するところから、千年松の料理が始まります。
鯛は、いろいろな料理になる
鯛のおもしろいところは、いろいろな食べ方ができることです。
刺身にしてもいい。
焼いてもいい。
料理の素材として使ってもいい。
そして、だしとしても楽しめる。
同じ魚なのに、調理方法によってまったく違った味わいになります。
千年松でも、鯛は料理だけでなく、オンラインショップの商品にもつながっています。
以前の記事で紹介した「鯛だし醤油」も、そのひとつです。
旅館で食べていただく料理と、家に持ち帰って使っていただく商品。
形は違いますが、どちらも「鯛」という素材から千年松の食を感じてもらえるものだと思っています。
「地元の魚を食べる」ということ
旅館に泊まる楽しみのひとつは、やっぱり食事だと思います。
特に、遠くから旅行に来ていただいたお客様には、
「せっかくここまで来たのだから、この土地のものを食べてほしい」
と思います。
どこでも食べられる料理ではなく、
「ここに来たから食べられた」
と思ってもらえる料理。
それは、必ずしも高級な食材である必要はありません。
その土地で昔から食べられているもの。
地元の人にとって身近なもの。
その季節においしいもの。
そうしたものを食べることも、旅の楽しみだと思います。
鯛も、そんな「大島を感じてもらえる魚」のひとつです。
魚は、毎日同じではない
旅館の料理をしていると、食材には「予定通りにならない」ことがたくさんあります。
特に魚はそうです。
今日は何が入るのか。
どれくらいの大きさなのか。
どんな状態なのか。
それによって、料理の考え方も変わります。
スーパーで魚を買うように、
「今日はこれを使う」
とすべて決まっているわけではありません。
その日に入ってきた魚を見て、
「これは刺身がいい」
「これは焼いたほうがおいしい」
と考える。
そこに、海の近くで料理をする面白さがあります。
魚を届けてくれる人がいる
そして、忘れてはいけないのが、魚を届けてくれる人たちです。
私たちが厨房で料理できるのは、魚を獲り、届けてくれる人がいるからです。
以前の記事でも「仕入れは料理の始まり」という話を書きました。
魚料理は、料理人だけで完成するものではありません。
海があって。
漁をする人がいて。
魚を届けてくれる人がいて。
それを料理する人がいて。
最後に、お客様が食べてくれる。
そのすべてがつながって、一皿の料理になります。
だから、魚を見るときには、
「この魚は、どこから来たんだろう」
と考えることがあります。
鯛を食べると、大島を思い出してほしい
千年松で鯛を食べていただいたとき、
「鯛、おいしかったな」
だけで終わっても、もちろん嬉しいです。
でも、できればその先に、
「大島で食べた鯛、おいしかったな」
と思い出してもらえたら、もっと嬉しい。
さらに、
「あのとき見た海、きれいだったな」
「またしまなみ海道に行きたいな」
「今度は千年松に泊まりたいな」
そんなふうにつながっていけばいいなと思っています。
料理は、その土地の記憶を残してくれるものでもあると思うからです。
「鯛」という魚から、千年松が見えてくる
鯛そのものは、決して特別珍しい魚ではありません。
でも、
どこで食べるか。
誰が料理するか。
どんな海のそばで食べるか。
誰と一緒に食べるか。
それによって、同じ鯛でも思い出は変わります。
千年松で食べる鯛が、
「大島に来た思い出の味」
になってくれたら嬉しいです。
料理は、場所と切り離せない
最近、料理の記事を書いていて改めて思うことがあります。
料理だけを紹介しても、本当の千年松は伝わらないのかもしれません。
焙烙焼きがあって。
アナゴしゃぶがあって。
鯛料理があって。
そのすべての背景に、大島の海があります。
そして、その海とともに暮らす人たちがいます。
だから千年松の料理は、
「料理を食べる」というより、「大島を食べてもらう」
くらいの気持ちでいたいと思っています。
もちろん、大げさなことをしているわけではありません。
その日に入った魚を大切にする。
素材を活かす。
地元のものを知ってもらう。
それを丁寧に続ける。
その積み重ねです。
今日も、海を見ながら魚を考える
今日も千年松の目の前には海があります。
そして、その海から魚がやってきます。
何が入るかは、その日にならないと分からないこともあります。
だからこそ、
「今日は何が食べられるんだろう」
という楽しさがあります。
旅館の料理は、毎日同じであることも大切です。
でも、千年松では、
その日に出会った魚を、その日に一番おいしい形で食べてもらう。
そんなことも大切にしていきたいと思っています。
鯛も、そんな千年松の料理を支えてくれている魚のひとつです。
次に千年松へ来られたときには、ぜひ料理だけでなく、その料理の向こうにある海にも目を向けてみてください。
きっと、いつもと少し違った味わい方ができると思います。
