2026/10/02 09:14

こんにちは。
愛媛県今治市、大島にある海宿 千年松です。

前回は、千年松の料理のひとつ「焙烙焼き」についてお話ししました。

今回も、千年松の料理について。

ご紹介したいのは、アナゴです。

アナゴと聞くと、どんな料理を思い浮かべますか?

煮穴子。

天ぷら。お寿司。

おそらく、火を通した料理を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

実は千年松では、アナゴを刺身でもお出しすることがあります。

「アナゴって刺身で食べられるの?」

初めて聞いた方は、そう思われるかもしれません。

そして、そこからさらに楽しんでいただきたいのが、

「アナゴしゃぶ」です。

アナゴを刺身で食べるということ

アナゴは、一般的には加熱して食べる魚というイメージが強いと思います。

千年松でも、もちろん火を通したアナゴ料理をお出しすることがあります。

でも、鮮度の良いアナゴが入ったときには、刺身という食べ方もあります。

これが、なかなか面白い。

身は思っているよりも繊細で、

「アナゴって、こんな味なんだ」

と感じていただけると思います。

ただし、どんなアナゴでも刺身にできるというわけではありません。

だからこそ、

「その日に入った魚を見て、どう食べてもらうかを考える」

という千年松の料理につながっています。


刺身で食べたあとに、少しだけしゃぶしゃぶ

そして、アナゴをさらに楽しんでいただくのが「アナゴしゃぶ」です。

まずは刺身で味わう。

そして、そのアナゴを今度は出汁にくぐらせる。

時間はほんのわずか。

2秒ほど。

しゃぶしゃぶという名前の通り、本当に軽くくぐらせます。

すると、刺身とはまた違った食感になります。

同じアナゴなのに、

「刺身としゃぶしゃぶで、こんなに違うんだ」

という面白さがあります。

一つの食材を、二つの食べ方で楽しんでいただく。

これもアナゴしゃぶの魅力だと思っています。


「2秒」が大事

アナゴしゃぶで面白いのが、この「2秒」という時間です。

長く火を入れればいいわけではありません。

さっとくぐらせる。

そして食べる。

そのタイミングによって、食感も変わります。

お客様に料理をお出しするとき、

「2秒くらいで大丈夫ですよ」

とお伝えすると、

「そんなに短いんですか?」

と驚かれることもあります。

でも、その短い時間だからこそ楽しめる食感があります。

料理は、食材だけで決まるものではありません。

どう切るか。

どう火を入れるか。

どのタイミングで食べてもらうか。

そんな細かなところまで含めて、一つの料理になるのだと思います。


なぜ千年松ではアナゴを大切にするのか

千年松は海の目の前にあります。

そして、地元の魚を大切にしています。

「せっかく大島まで来ていただいたのだから、大島で食べられる魚を食べてもらいたい」

これは、私たちが料理を考えるうえで大切にしていることのひとつです。

全国的に有名な高級食材を集めてくることも、もちろん料理としてはできます。

でも、千年松でしか味わえないものは何だろう。

そう考えると、やっぱり地元の海から届く魚は大切にしたい。

アナゴも、そのひとつです。


魚は「仕入れた時点」で終わりではない

以前の記事でも書きましたが、千年松では魚の仕入れを大切にしています。

魚は、毎日同じように入ってくるわけではありません。

今日は何が入ったのか。

どんな状態なのか。

どの料理にするのが一番おいしいのか。

それを見ながら料理を考えます。

だから、料理人の仕事は、

「決められた料理を作る」

だけではないと思っています。

その日に入った食材を見て、

「これなら、こうしたらおいしい」

と考える。

そこに料理の面白さがあります。

アナゴしゃぶも、そうした考え方から生まれる料理のひとつです。


旅館の料理は、「その土地を食べる」こと

旅行の楽しみのひとつに、食があります。

その土地でしか食べられないもの。

その土地だからおいしいもの。

その季節にしか出会えないもの。

そういうものを食べると、

「ここに来たんだな」

という実感が湧きます。

千年松でアナゴを食べてもらうことも、同じだと思っています。

ただアナゴを食べるのではなく、

大島に来て。

目の前の海を見て。

その海の近くで獲れた魚を食べる。

そうすると、料理の味だけではなく、

「大島で食べたアナゴ」

という記憶になります。

それが旅の料理の良さだと思います。


「知らなかった」を楽しんでほしい

旅館で料理を出していると、

「こんな食べ方があるんですね」

という言葉をいただくことがあります。

私は、その瞬間が結構好きです。

知っている料理を食べることももちろん楽しい。

でも、

「アナゴって刺身で食べられるんだ」

「しゃぶしゃぶにすると、こんな感じになるんだ」

という小さな驚きがある。

その「知らなかった」が、旅の思い出になることもあると思います。

千年松では、そういう料理をこれからも大切にしていきたいと思っています。


地元の魚を、地元だからこそ楽しむ

豪華な食材を使うことだけが、いい料理ではありません。

その土地にあるものを知る。

旬を知る。

魚を届けてくれる人を知る。

そして、その素材に合った食べ方を考える。

それも料理だと思います。

アナゴしゃぶは、派手な料理ではないかもしれません。

でも、

「大島に来たから食べられた」

「千年松に泊まったから知ることができた」

そう思っていただける料理なら、それは千年松にとって大切な一品です。


次に千年松へ来たときに

もし千年松でアナゴ料理を見かけたら、

「今日はどんなアナゴが入ったんだろう?」

そんなふうに楽しんでみてください。

その日の魚の状態によって、料理が変わることもあります。

それも、海の前の旅館ならではだと思います。

毎日同じではない。

だからこそ、その日にしか味わえない。

それが、地元の魚を扱う面白さです。

刺身で味わう。

そして、2秒ほどしゃぶしゃぶしてみる。

同じアナゴでも、二つの表情を楽しめる「アナゴしゃぶ」。

ぜひ一度、千年松で味わっていただきたい料理のひとつです。

料理を食べ終わったあとに、

「アナゴって、こんなにおいしいんだね」

と言っていただけたら。

それが、料理を作る私たちにとって何より嬉しいことです。

次回もまた、千年松の料理を一品ずつご紹介していきます。