2026/09/28 08:34
こんにちは。
愛媛県今治市、大島にある海宿 千年松です。
旅館の仕事をするようになってから、以前よりも気になることが増えました。
例えば、ホテルや旅館に泊まったとき。
部屋に入った瞬間に、
「ここ、きれいだな」
「ここまで掃除しているんだな」
と、以前より細かいところを見るようになりました。
自分が旅館の現場に入るようになって、掃除という仕事の見え方が変わったからだと思います。
今日は、そんな「掃除をして、初めて分かったこと」の話です。

掃除は、きれいにするだけではなかった
旅館で働く前は、掃除というと、
「汚れているところをきれいにする仕事」
くらいに考えていました。
もちろん、それも間違いではありません。
でも、実際にやってみると、それだけではありませんでした。
掃除をしていると、
「昨日はここに何かあったな」
「この場所、少し傷んできたな」
「この設備、そろそろ交換したほうがいいかもしれない」
と、いろいろなことに気づきます。
つまり、掃除は単に汚れを落とす作業ではなく、
建物や設備の状態を確認する時間でもある。
そう思うようになりました。
毎日見ているからこそ、分かる変化がある
旅館は、毎日使われています。
お客様が部屋を使う。
お風呂を使う。
廊下を歩く。
食事をする。
その繰り返しです。
だから、少しずつ傷んでいきます。
昨日までは気にならなかったところが、今日は気になる。
そんなこともあります。
掃除をしていると、
「ここ、前より汚れが落ちにくくなったな」
「この部分、少し緩んでいるな」
「この設備、音が変わったな」
という小さな変化に気づくことがあります。
それは、毎日見ているからこそ分かる変化です。
そして、その小さな変化を放っておくと、いつか大きな問題になることがあります。
だから、掃除をすることは、旅館を守ることにもつながっているのだと思います。
お客様は、意外と細かいところを見ている
自分が掃除をする側になって、もうひとつ気づいたことがあります。
お客様は、私たちが思っている以上に細かいところを見ています。
もちろん、すべてを見ているわけではありません。
でも、ふとした瞬間に目に入る場所があります。
部屋の隅。
窓。
水回り。
床。
鏡。
手すり。
そういう場所がきれいだと、それだけで安心できます。
逆に、たった一か所の汚れが気になってしまうこともあります。
料理のように、
「これはすごい!」
と分かりやすく評価されるものではありません。
でも、
「なんとなく気持ちいい」
「なんとなく落ち着く」
という感覚は、こうした小さな積み重ねから生まれるのだと思います。
「何も感じない」ことが、実は大切
旅館に泊まって、
「部屋の床がきれいだった」
「廊下にホコリがなかった」
と、わざわざ思う人は少ないと思います。
でも、それでいいのかもしれません。
掃除がきちんとできていれば、お客様は何も気にせず過ごすことができます。
部屋に入って、
「きれいだな」
と一瞬感じたあと、あとは気にせず過ごしていただく。
それが理想なのかもしれません。
目立たない。
褒められない。
でも、なくなるとすぐに分かる。
掃除という仕事は、そんな仕事です。
自分でやってみると、スタッフの大変さが分かる
専務という立場になってから、現場に入る機会が増えました。
実際に掃除をしてみると、
「これを毎日やっているのか」
と思うことがあります。
一部屋だけなら、まだいい。
それが何部屋も続く。
ベッドや布団を整える。
水回りを掃除する。
床を掃除する。
備品を確認する。
次のお客様を迎える時間までに終わらせる。
体力も使います。
時間も限られています。
そして、毎日同じように続きます。
自分でやってみると、スタッフが普段どれだけ動いてくれているのかが、少しずつ分かるようになります。
これは、数字だけを見ていても分からないことでした。
掃除をすると、「お客様の目線」になる
掃除をしていると、自然とお客様の目線で部屋を見るようになります。
ここに座ったら、何が見えるだろう。
この窓は汚れていないだろうか。
この場所に荷物を置きやすいだろうか。
この設備は使いやすいだろうか。
そうやって考えていると、
「自分たちが働きやすい旅館」
ではなく、
「お客様が過ごしやすい旅館」
という視点が少しずつ身についていきます。
これは、私にとって大きな変化でした。
経営も、結局は現場につながっている
専務になると、売上や利益、人件費、原価など、どうしても数字を見る時間が増えます。
数字は大切です。
経営をする以上、避けて通ることはできません。
でも、数字の先には必ず現場があります。
売上をつくるのも人。
料理をつくるのも人。
部屋をきれいにするのも人。
お客様を迎えるのも人。
そして、その人たちが働く場所が旅館です。
だからこそ、
「現場を知らずして経営はできない」
ということを、掃除をすることで改めて感じるようになりました。
掃除をすると、旅館のことが少しずつ分かってくる
掃除を始める前は、掃除は「きれいにするための作業」だと思っていました。
でも今は違います。
掃除をすると、建物のことが分かる。
設備のことが分かる。
お客様の目線が分かる。
スタッフの大変さが分かる。
そして、旅館そのものが少しずつ分かってくる。
だから私は、掃除という仕事を大切にしたいと思っています。
もちろん、専務だから掃除をしなくてはいけない、という話ではありません。
自分で現場に入ることでしか見えないものがある。
それを知っていることが、これから千年松をつくっていくうえで大切だと思っているからです。
今日も、朝から掃除をしています
今日も千年松では、お客様を迎えるために掃除をしています。
きっとお客様には、その姿は見えません。
チェックインして部屋に入ったとき、
「きれいだな」
と感じていただけたら、それで十分です。
掃除をした人の名前が残るわけでもありません。
「ここを頑張って掃除しました」
と説明することもありません。
でも、その何気ない一日を支えているのが、こうした仕事です。
旅館には、見える仕事と見えない仕事があります。
そして、見えない仕事の積み重ねが、見える「千年松」をつくっています。
掃除をするようになって、私はそのことを少しずつ理解できるようになりました。
これからも、きれいにするだけではなく、
千年松を守るための掃除。
そんな気持ちで、現場に立ち続けたいと思っています。
