2026/09/27 08:52
こんにちは。
愛媛県今治市、大島にある海宿 千年松です。
旅館の仕事と聞くと、何を思い浮かべますか?
料理を作る。
料理を運ぶ。
お客様をお迎えする。
チェックインの手続きをする。
たぶん、そんな姿を思い浮かべる方が多いと思います。
もちろん、それも旅館の大切な仕事です。
でも、実際に旅館で働いてみると、それだけではありません。
むしろ、お客様の目に触れないところに、たくさんの仕事があります。
今日は、そんな「旅館の裏側」の話です。

お客様が来る前に、旅館の仕事は始まっています
お客様がチェックインされる時間は、午後です。
でも、そのずっと前から旅館の仕事は始まっています。
部屋の掃除。
布団やベッドの準備。
館内の清掃。
お風呂の準備。
アメニティの確認。
料理の仕込み。
食事会場の準備。
足りないものがないか確認する。
そして、昨日のお客様が帰ったあとに出たものを片付ける。
お客様からすると、
「きれいな部屋が用意されている」
「食事が時間通りに出てくる」
「お風呂に入れる」
というだけのことかもしれません。
でも、その「当たり前」のために、朝からたくさんの人が動いています。
旅館の仕事で、意外と多いのが「掃除」
旅館にとって、掃除はとても重要な仕事です。
どれだけ料理がおいしくても、
部屋が汚れていたら、気持ちよく過ごしていただくことはできません。
逆に言えば、掃除がきちんとできていることで、お客様は何も気にせず過ごすことができます。
だから、掃除は「目立たないけれど、とても大切な仕事」です。
私自身も、旅館の仕事をするようになってから、掃除を見る目が変わりました。
以前は、
「きれいになっている」
くらいにしか思っていなかったものが、
「ここは、どうやって掃除しているんだろう」
「この汚れはどうやったら落ちるんだろう」
と考えるようになりました。
実際に自分でやってみると、これが結構大変です。
そして、毎日やっている人のすごさが分かります。
見えない仕事ほど、なくなると気づく
旅館には、たくさんの「見えない仕事」があります。
電球が切れれば交換する。
設備がおかしければ確認する。
水回りに問題があれば対応する。
備品がなくなれば発注する。
庭や建物の手入れをする。
ゴミをまとめる。
倉庫を整理する。
在庫を確認する。
何かが壊れれば修理する。
こうした仕事は、うまくいっているときには誰にも気づかれません。
でも、ひとつでも止まると、
「いつもあるものがない」
「いつも使えるものが使えない」
ということになります。
そこで初めて、
「当たり前って、当たり前じゃなかったんだな」
と気づきます。
旅館というのは、そういう小さな「当たり前」の積み重ねでできているのだと思います。
専務になって、現場を見るようになった
私はもともと旅館業の人間ではありませんでした。
以前は営業の仕事をしていました。
そして、千年松で専務という立場になってから、旅館の現場に入るようになりました。
接客だけではありません。
掃除もします。
片付けもします。
設備を見ることもあります。
時には、何かが壊れれば自分で直すこともあります。
最初は、
「専務がこんなことまでやるの?」
と思われることもあるかもしれません。
でも、私自身はそうは思っていません。
むしろ、
現場を知らずして、経営はできない。
そう思っています。
数字だけを見ていても、旅館の本当の姿は分からないからです。
売上だけでは分からないことがある
経営をしていると、どうしても数字を見ます。
売上はいくらだったのか。
前年と比べてどうなのか。
利益は出ているのか。
人件費はどうなのか。
原価はどうなのか。
もちろん、経営にとって数字はとても大切です。
でも、数字だけを見ていると見えなくなるものもあります。
例えば、
「なぜ、この作業に時間がかかっているのか」
「なぜ、この設備がよく壊れるのか」
「なぜ、スタッフが大変だと感じているのか」
こうしたことは、現場に入ってみないと分かりません。
だから私は、できるだけ現場を見るようにしています。
自分でやってみる。
スタッフと一緒に動いてみる。
そうすると、数字の裏側にあるものが少しずつ見えてきます。
旅館は「人」がつくっている
建物がある。
客室がある。
料理を作る厨房がある。
お風呂がある。
海が見える。
それだけでは、旅館にはなりません。
そこに、人がいるから旅館になります。
掃除をする人。
料理を作る人。
料理を運ぶ人。
お客様を迎える人。
裏側で準備をする人。
設備を守る人。
そして、その全員がいるからこそ、お客様にとっての「千年松」ができています。
お客様から見えるのは、その一部分だけです。
でも、その一部分の裏側には、たくさんの人の仕事があります。
「何も起こらない」が、一番いい仕事なのかもしれない
旅館の仕事をしていて、最近思うことがあります。
何かすごいことをするより、
「何も起こらない一日」をつくることのほうが大切なのかもしれない。
お客様が部屋に入って、気持ちよく過ごす。
料理が予定通り出てくる。
お風呂に入る。
ゆっくり眠る。
朝になったら、朝食を食べる。
そして、
「よかったね」
と言って帰っていく。
その一日を何事もなく終えていただく。
それは、決して簡単なことではありません。
たくさんの人が準備をして、気を配って、時には見えないところで問題を解決しているからこそできることです。
今日も、見えないところで誰かが動いています
千年松では、今日も誰かが掃除をしています。
誰かが料理の準備をしています。
誰かが館内を確認しています。
誰かが、お客様を迎える準備をしています。
そして、お客様が来られる頃には、そんなことを感じさせないように、いつもの千年松になっています。
旅館の仕事は、華やかな仕事ばかりではありません。
むしろ、地味な仕事のほうが多いかもしれません。
でも、私はその一つひとつが千年松をつくっていると思っています。
料理も。
接客も。
掃除も。
片付けも。
設備管理も。
そして、人とのつながりも。
全部がつながって、ようやく一つの「宿」になる。
専務になって、現場に入るようになって、
そんな当たり前のことを、少しずつ実感するようになりました。
今日も千年松では、誰かが見えないところで動いています。
そして、その積み重ねの先に、
「また来たい」
と思ってもらえる千年松があればいいなと思っています。
